鳥取家庭裁判所米子支部 事件番号不詳 判決
被告人 山崎俊郎
主文
被告人を懲役四月に処する。
但しこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は境港市相生町六十五番地備前屋こと樋口千代子方裏の倉庫及び土蔵を借り受け、接客婦を住込ませて売淫をさせる所謂特殊下宿業を営んでいるものであるが山崎好介より接客婦として紹介された満十八才に満たない児童であるK子(昭和十四年二月一日生)B子(昭和十六年二月十五日生)T子(昭和十六年三月十七日生)S子(昭和十六年二月十七日生)M子ことA子(昭和十五年一月九日生)を自宅に住込ませて昭和三十年十二月二十四日頃より昭和三十一年五月四日頃までの間同所において別表記載のとおり各児童をして遊客を相手に売淫をさせ以て児童に淫行させたものである。
(証拠の標目)
一、被告人の当公廷における供述
一、山崎好介の検察官に対する第一回供述調書
一、K子の検察官に対する供述調書及び同人の身上調書(別表番号1事実)
一、証人B子の当公廷における供述、同人の戸籍抄本(別表番号2事実)
一、T子の司法警察員に対する供述調書及び同人の戸籍抄本(別表番号3事実)
一、S子の検察官並びに司法警察員に対する各供述調書同人の身上調書及び住民票(抄本)(別表番号4事実)
一、A子の検察官並びに司法警察員に対する各供述調書及び同人の登録証明書(別表番号5事実)
一、明細書二通(証第六、七号)(別表番号2乃至5事実)
(法令の適用)
一、判示各所為につき児童福祉法第三十四条第一項第六号、第六十条第一項(懲役刑選択)
一、併合罪の関係につき刑法第四十五条前段第四十七条第十条(犯性の最も重いと認めるA子に淫行をさせた罪の刑に法定加重)
一、執行満予につき刑法第二十五条第一項
一、訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第百八十一条第一項本文
(弁護人の主張に対する判断)
(一) 弁護人は被告人は判示各児童の年齢確認については仲介者山崎好介及び各児童本人に再三再四念を入れて聞きただし同人らからいずれも満十八才以上である旨を告げられたのでそれを信じたもので満十八才未満の児童であることを知らずこれを知らなかつたことは被告人の過失によるものでない旨を主張する。
しかしながら児童を接客婦として住込ませようとするような場合には仲介者及児童本人が雇主に対し故意に年齢を偽り満十八才以上であるように装うことは稀有ではなく児童ら自身の年齢告知が必ずしも真実と一致するものではないのであるから業者としてはそれ以上自ら進んで年齢確認について戸籍謄本その他につき正確な調査をすべきに拘らず証拠によれば被告人はこれらの処置をとらず漫然同女らの虚偽の年齢告知を軽信して児童でないと誤信したというのであるからいまだもつて被告人に年齢確認につき過失がなかつたものと謂うことはできない。
(二) 弁護人は又判示K子について被告人は同女に対し淫行を強制したものでないことはもとより心理的圧迫をすら加えたものでなく淫行は同女の自由意思によるものであると主張する。しかしながら法律に所謂「淫行をさせる行為」とは淫行を強制勧奨する等積極的な場合は勿論、児童をして淫行に至らしめることを助成し若しくはこれに原因を与えるものと見られる一切の行為を包含する法意であると解すべきところ、本件の場合証拠によれば被告人は判示Kを同女が売淫して得た稼高を折半する約束にて自己の経営する店舖に接客婦として雇入れ、住込ませて他の同様の婦女数人と共に自己の営業に使用し同女をして判示の如く淫行をなすに至らしめたものであるから個々の売淫は同女の自由意思に基くものであるにしてもその淫行について原因を与え且つこれを助成したものと謂わねばならない。
よつて右弁護人の主張はいずれもこれを採用しない。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 吉田輝彦)
別表
番号 児童名 犯行期間 淫行回数
1 K子 自昭和 三十年十二月二十四日頃 数回
至 同三十一年 一月二十九日頃
2 B子 自昭和三十一年 四月二十二日頃 八回位
至 同 年 五月 三日頃
3 T子 自昭和三十一年 四月二十三日頃 六回位
至 同 年 五月 三日頃
4 S子 自昭和三十一年 四月二十三日頃 十二回位
至 同 年 五月 四日頃
5 A子 自昭和三十一年 四月二十三日頃 十二回位
至 同 年 五月 四日頃